FSとシーナリの変遷

 

MSFSについて

 このサイトで取り上げているFSとは、Microsoft社(以下 MS)の Flight Simulator、通称MSFS のことです。

MSFSにはとても素晴らしいところがあります。それは、FS本体ソフトを導入した後に、好みの機体パネル、そしてシーナリ等をドンドン 自作して追加出来る ということです。これらを総称してFSのアドオン (Add-on) などと呼んでいます。

それらのアドオンは、ネットを通じて配布して他の人のPC上で再現させることも出来ますし、プロが作ったアドオンがPC SHOPやINTERNETのオンラインストアで沢山販売されています。また、作品の販売に留まらずアドオンを自作するためのToolまでもが販売されていて、これらは、FSの歴史と共に発展してきています。

インターネット上ではこのMSFSに関する話題や、自分達で作った作品を公開するサイトが、それこそ星の数ほど登場しています。私のリンクを見ていただいても、実に多くの方がご自分でサイトを運営しながら作品公開をされているのがわかると思います。

MSFSの歴史として、私が初めてPCを購入した95年当時は、Windows3.1がありましたが、MSFSは、DOS専用のFS5.1でした。

96年11月のFS95の英語版発売を気に、Windows対応になり、

そして、Windowsが発展するよりも早いテンポでバージョンアップが進み、

    97年9月 FS98 英語版、98年1月 FS98 日本語版

    99年10月 FS2000 英語版、00年1月 日本語版

    01年10月 FS2002 英語版

    03年7月 FS2004 英語版、

    06年10月 FSX 英語版

と進化してきています。過去のリリースサイクルを見ると、2-3年おきに新版が出ているので、09年の秋あたりには、次期FS11が出てくるのではないか?と個人的に予測します。FS200〜2002〜2004までの進化が好評を得ていたのに対して、FSXは、発売後2年経っても、FS2004の方が良いという声も多く(丁度、VistaとXPのような関係でしょうか?)、FS11での改善には、個人的に期待したいです。

 

FSシーナリについて

FSは、世界中で発売されているため、外国の人とお互いの作品を交換し合ってお友達になってしまうなんてことも可能です。このHPでは、特にシーナリと呼ばれる風景の部分についてこだわって色々ご紹介していきたいと思っています。

 

FS98でのシーナリ

CFSでのシーナリ

  PHOTO: FS98(左)とCFS(右)でのシーナリの見え方の違い
Voodoo Banshee使用

 


 

FSの各バージョンとシーナリの変遷

FSのバージョンとシーナリがどのように変わってきたかをご紹介します。

FS5の時代

私がFSを始めた95年当時に販売されていたのが、このDOS版最後のFS5でした。FS5といっても二つのバージョンが存在していて、FS5.0(後に、Pentium対応等のパッチを当てた5.0aというバージョンに移行)とFS5.1です。FS5.1は、バージョンが0.1上がっただけですが、結構な違いがあり、今なら何気なく活用している各シーナリ専用のフォルダ設定やレイヤの管理など、最近のFSでも使われている方法は、実はこの5.1からスタートしています。

シーナリファイルは、常にファイルの拡張子が BGL (BAO Graphic Language) になっていますが、このファイル形式もこのFS5の時代に生まれました。BAOというのは、FS を作った会社で、当時は制作元 BAO、販売元 Microsoft という風にして販売されていました。このBAOという会社は、FS5を最後にMicrosoftに買収されました。BGLファイルが、今日のFS2004においても発展しながら、未だ基本形が活きているということは、この当時の構想が素晴らしかったんだろうと思います。FS5用のシーナリは、若干の手を入れてやることで、FS2004においても使えます。

この時代、BGLファイルは、BAOもMicrosoftもファイル構造の詳細を一切公開しておらず、全てアマチュアたちがファイルの中身を分析して、さらにそのToolを作る、という本当にこういうことが好きな人たちによって支えられていました。

FS5時代の商用シーナリ

当時は、FS5本体には満足なシーナリが添付されておらず、JAPAN、Caribbean、そしてHawaiiなど、Microsoftから別売りのアドオンとして販売されていました。特にJAPANは、日本国内のフライトを楽しむには必須のものでした。MicrosoftがJAPANを別売りにしても販売したのは、それなりにマーケットを意識していたのか、いずれにせよ、JAPAN さえ手に入れれば日本の大半の空港が手に入るというのは、アドオンが売り出されていない地域の方々からすれば恵まれた環境であったと思います。また、ヨーロッパの人々のために、Apollo Softというドイツの会社からEurope 1Europe2も販売されていました。

FS5時代のシーナリ作成Tool

シーナリ作成で、以前にお勧めしていたAirportもFS5時代から存在していました。当時はDOS版でしたが。また、商用ツールとして、Scenery Object Designer シラッティーコマンダーなども発売されていました。

 


 

FS95の時代

Windowsも95が発売され、FSもWindows対応版が待ち望まれていました。そしてついにFS95の発売です。シーナリ構造については、FS5時代と大きな違いはなく、JAPANも関東近辺は標準で付属するようになりました。FS5時代との大きな差はWindows上で動かされる他、解像度が自由に変えられる様になり、詳細な解像度を選ぶとFS5で使っていたシーナリも見違えるようになりました。(FS5時代は、640x400が最大であった)ただ、嬉しさのあまり、沢山のシーナリを入れ過ぎるとWindowsがハングアップする問題があり、当初はバグと称されていましたが、これは最後まで直りませんでした。

FS95時代の商用シーナリ

Microsoft自身が、FS95を発売した際に、Southern California Expansion Packを発売しました。また、トワイライト社から発売された一連のJapanシーナリシリーズもこの時代だったと思います。

 


 

FS98の時代

そして、97年9月には、FS98英語版が発売されました。

FS98の登場は、以下のような様々な改善を提供してくれるようになりました。

1)3D Video cardへの対応。
独特のテクスチャマッピング、フレームレートの改善等、これらのVideo Cardの効果は、ご存知のとおり、かなりあります。当時は、Voodoo2 Banshee、それにRIVA TNTと言った最速のチップを採用したビデオカードが登場し、フレームレートの大幅な改善を図っていました。

2)Force Feed Back対応
MS社やCH社から発売されているForce Feed Back対応のジョイスティックを使うことで、機体の挙動に合わせたジョイスティックからの反応を感じることが出来ます。私もMS品を買いましたが、好みは賛否意見の分かれるところでしょう。プラグを抜かない限り、PCの電源ONと同時にファンが回りっぱなしになるのはちょっと閉口しました。

3)マルチプレーヤ機能搭載。
インターネット上で接続し合うことで、8人までが一緒に飛べるようになりました。 この時の機体は、コンバータを使えばフライトショップで作った自作の機体でもOKです。一度、経験しましたが、結構ハマります。

4)そして、シーナリの改善
今まで有償販売されていたMS純正のシーナリ(Japan,Hawaii, Carib,それにLas Vegas)が全て入っています。空港名等に検索機能が付きました。空港名の頭の数文字を入れることで直接辿り着くことが出来ます。

・ 可動オブジェクトであるダイナミックシーナリの機体にテクスチャが使用されるようになり、リアルになりました。以前は、周囲の機体の動きなどお構い無しのこの機体でしたが、、こちらの機体の挙動を判断して、滑走路進入待機など気を遣ってくれるようになりました。(Meigsで試してみて下さい)

・ DynKitDODと言ったFreeのToolの登場により、お好みの機体をダイナミックシーナリとして使うことが出来るようになりました。

・ FS98用コンバータに同梱のパッチを導入することで、シーナリ用メモリー割り当てが従来の倍の512KBになりました。特定地域にシーナリファイルを入れ過ぎてのハングアップや非描画などの問題が解消されました。FS98以降のMSの姿勢として、アドオンものを作っている3rd Party勢の存在を公式に認めたことでしょうか。従来まで、無関係との姿勢だったのに、アドオンの存在がFS自体の販促に大いに貢献していると言い始め、SDKの公開が始まりました。  

 


 

FS2000の時代

 FS2000英語版は、99年10月、日本語版は2000年1月に発売されました。

様々な改良で、GPSやFlight Plan作成など、従来ならアドオンが担っていた分野も取り込まれ、また、FSとして初めて雨や雪が見えるようになりました。

シーナリについても大幅な変更がなされ、特にオブジェクトやビルなどは目を見張るほど綺麗になりましたが、一方で、高速なCPUがないと重くて飛べないとか、従来のシーナリがそのまま使えないという問題が出始めました。

 FS2000用シーナリの特長としては、

・ 従来のタイル形式を止め、全ての地表は、高度を持ったものに代わりました。このため、シーナリ作成のためには、Flattenという機能で該当地域を平坦化させておく必要があります。

・ 該当地域の元シーナリを削除するためのExcludeは、SCENERY.CFGというテキスト形式のファイルに記述することになりました。上のFlattenも同様です。

・ 但し、FlatternもExcludeも従来どおり、BGLファイル内に織り込むことも可能です。

・ ポリゴン等のLayer処理が若干変わっています。また、多くのいくつかのマクロ用コマンドの処理も変わっています。

・ シーナリ格納用メモリの制限撤廃。どんなに緻密なシーナリを作成してもハングアップすることがなくなりました。重くて飛べなくなるかもしれませんが・・・。

・ 色数最大256色までに制限のあったテクスチャの他、BMPを使えるようになりました。夜間用は専用テクスチャを作成することで、よりリアルな風景を楽しめるようになりました。

・ FS2000時代においても、FS98の時と同様、MSからSDKが公開されました。

FS2000用シーナリについては、従来の作成知識だけでは通用せず、FS2000の特長をうまく使いこなすことで、より素晴らしいシーナリが作成可能になりました。 

 


 

FS2002の時代

FS2002英語版は、01年10月に発売されました。あのSeptember Elevenの発生で、若干リリース時期が遅れ、WTCをシーナリから外して発売する、という経緯がありました。

FS2000が重くてFlightを十分楽しめない、という多くの声があったのを反映し、シーナリは、綿密になりながら、フレームレートを極力落とさないようにされていて、これがとても評判がいい理由になりました。

FS2002での改良点は、かなりに上り、

  • AutoGenという機能が入り、オブジェクトを意図的に置かなくとも、家、ビル、木などを表現できるようになりました。
  • 動くオブジェクトの代表格であったダイナミックシーナリに変わり、AI機体が登場、同様に追加されたATC機能と連動させることが可能になりました。このAI機は、その後、シーナリの領域を超えてAIのためにFS2002環境を整備する方も増えました。AFCADというツールで、ATCやAIを総合的にコントロールできるようになりました。
  • FS2002のPro版については、Gmaxという機体、オブジェクト作成のための3D モデリングツールが無料で付いてきて、また、このツールで作成したものの方がフレームレートを悪くさせないようになりました。   

 


 

FS2004の時代

FS2004 英語版は、2003年7月29日に発売されました。MSがFS新版の発売日を明確に宣言したのは、この時が初めてのように思います。(それまでは、Holiday Seasonリリース等)

FS2002の評判が非常に良かったため、出始めの頃は、色使いとか賛否両論(私も、当初は、FS2002の方が色合いや操作性が良い様に感じていました)ありましたが、その後、本当に数々のアドオンの登場により、FSXがリリースされた2年経った後も、FS2004を愛用し続けているユーザー数が相当数いるようです。

シーナリ面の変更は、以下のようなものがリリース当時に説明されていました。

  • ライブラリの追加変更は、FS起動後のメニューからは出来なくなりました。また、ライブラリ追加後は、FSをつど再起動する必要があり、作成作業はちょっと面倒になりました。その代わり、FSそのものの起動は早くなっていて、また、同一のシーナリを描画させてもFPSがかなり軽くなるようになっています。
  • かなり以前のFSから使われてきたいわゆる、R8系のテクスチャファイルは透過処理には使えなくなりました。相性も良くなくて、地表のポリゴンに使うと、チラツキが発生するようです。BMPを透過させる場合もアルファチャンネル付きDXT1系でないとNGのようです。
  • FS2002用のシーナリは、そのまま使える場合も多いです。
  • FS2002時代に大人気となったAI機体のファイル構造が変更になっています。また、ILSやVORなどのNavaidもAFDシーナリ側に統合されたため、Excludeファイルで削除できなくなりました。これらに合わせてAFCADも改定されたものがリリースされています。

FS2004の時代になって、ペイウェアのクオリティが、大幅に上がりました。特に、FlyTampaFlightSceneryFS Dream Team等の作は目を見張るものがあります。

 

 


 

FSXの時代

Windows Vistaの登場の前になる、06年10月に、FSXがリリースされました。リリース前には、MSがベータ版を無償配布する等行っていました。登場時の特徴は以下です。

  • 雨天時は、滑走路等、地面も濡れているように表示されるようになった。
  • フォトシーナリが一般的になり、はるかに高解像度のシーナリが作れるようになった。
  • FS2004時代に、個人的に好きでなかった、海や水の表現が著しく改善された。
  • FS2004でも、アドオン作者さんたちのご苦労により、AI機能を駆使して、船や鳥などのアニメーションが見えるようになっているが、FSXでは、空港内の乗り物や、道路を走る車、鉄道などが、標準仕様としてサポートされている。
  • FSのバージョンが上がる度に進化してきているAIも、恐らく問題点を改善する形で登場してくる。
  • ただ飛ぶことが基本のFSは、一般ゲーマーの方には敷居の高さを感じさせていたが、FSXでは、救助活動等、ミッション系の要素を取り入れようとしていて、この実現のために、新規のアニメーション効果が取り込まれ(油田火災での爆発や、それに伴ってのドラム缶が飛び出す等)、この機能を、一般FSに使えば、今まで見たことのないアニメーションが実現できる可能性がある。

等です。

過去2年間に、Service Pack 2(SP2)までリリースされ、それに伴い、SDKの改定もなされましたが、FS2004まで保たれていた、旧バージョン用アドオンとの互換性が、なくなりました。また、長らくシーナリ作成に使われてきていたSCASMというフリーのコンパイラが、ほぼ終焉を迎え、MS純正SDK付属のBGLCOMPというコンパイラ以外、実質使えなくなりました。

この旧バージョンの互換性がなくなったことにより、多くの以前のシーナリが使えなくなってしまったことも、FSXがリリースされて2年経っても、FS2004にとどまるユーザーが依然として多いことの主理由と思います。

次期版でも、FS2004以前のアドオンのサポートは、なされないと思いますが、FSXでの、アドオン作成の敷居が非常に高くなってしまっており、この部分を、どう改善するつもりなのか?、MSの意向が大変気になります。Windowsの次期版、Windows 7のベータの評判が良いようなので、FS側でもユーザー動向を出来るだけ取り入れてほしいと思っています。

 


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